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擦り切れる

子供のころ、ビデオデッキがなくて、テレビでやっている映画やアニメ、歌番組は、テレビのスピーカーの前にラジカセを置いて、映画なら2時間、自分の声が入らないように、家族が物音を立てるのを注意深く監視しながら録音したものでした。

音だけなので、説明なく無言のシーンもあります。それでも子供の私は記憶と想像力を全開にしてその映画を楽しみました。

私にはその経験があるからかもしれませんが、なにかその要素のすべてをみること、わかることが出来なくても「楽しむ」ということはできるのではないかと思います。

詩は、その言葉一つにすべては含まれているとしても、書き尽くしてはいません。

言葉というか、音も、絵も、演劇も、人も、人生も、命も、それぞれの存在は、 「すべてが含まれているとしても、顕れ尽くされてはいない」 と、

だから、目に見える、聞こえる、など感じられていることを、 おざなりに、なおざりには。

カセットテープは聞いていると伸びてきて、しまいにはすりきれてしまいます。

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